精神の障害について(③知的障害)
今回は、精神の障害の内、知的障害に関する事項をまとめてみました。
知的障害とは?
知的障害については、「障害認定基準」の認定要領に次のように記載があります。
(障害認定基準第3第1章第8節/精神の障害 2認定要領D知的障害)
また、文部科学省の「障害のある子供の教育支援の手引き」には次のように記載があります。
知的障害の障害の程度と障害の状態の例示
知的障害の障害の程度(1~3級)と障害の状態は、認定要領に次のとおり一部例示の記載があります。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの |
2級 | 知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの |
3級 | 知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの |
知的障害での障害年金申請について
ポイント1療育手帳と知能指数(IQ)
厚生労働省策定の「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の中に、障害の程度の認定の総合評価の際に考慮すべき要素として、「療育手帳の有無や区分を考慮する。」との記載があります。
具体的には、「療育手帳の判定区分が中度以上(知能指数がおおむね50以下)の場合は、1級または2級の可能性を検討する。それより軽度の判定区分である場合は、不適応行動により日常生活に著しい制限が認められる場合は、2級の可能性を検討する。」とあります。
※療育手帳がなくても障害年金の申請は可能です。
また、障害認定基準の認定要領には、「知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する。」とあります。
知能指数(IQ)が50を超える場合は障害が軽度と判断される可能性がありますが、上記のように必ずしも知能指数だけで障害年金の認定が判断されるわけではありませんので、申請にあたっては診断書や病歴・就労申立書に日常生活における(著しい)制限や支障、援助の状況を具体的に記載する事が重要です。
ポイント2就労について知的障害の方が就労している場合でも障害年金の受給は可能です。
認定要領では、「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。」と記載があります。
精神の障害に係る等級判定ガイドラインでは、考慮すべき具体例として、
「一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、仕事の内容が保護的な環境下での専ら単純かつ反復的な業務であれば、2級の可能性を検討する。」
「一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、他の従業員との意思疎通が困難で、 かつ不適切な行動がみられることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する。」
と記載があります。
障害年金の申請では仕事の内容だけでなく、まわりからの支援や本人が抱えている支障についても詳しく伝える必要があります。
先天性の知的障害の場合の障害年金は、
20歳前傷病による障害基礎年金※(1級または2級)の申請となり、
20歳に達した日(誕生日の前日)が障害認定日となり障害年金の申請が可能となります。
※20歳前傷病による障害基礎年金についてはこちら(20歳前傷病による障害基礎年金について)
当然ですが、障害認定日に障害の状態(1級または2級)にあることが受給の条件となります。
申請には、20歳に達した日前後3か月以内の状態を記載した医師の診断書(日本年金機構所定の様式:精神の障害用)が必要となります。
尚、出生日が初診日となるため、初診を証明する書類(受診状況等証明書)は不要です。